精霊魔法と学園LOVE.STORY Ⅳ

〜王都への道〜

第十一話 恋心

第十一話 〜恋心〜


俺は家でミストを待っている。
私服に着替え、そのままリビングで寛ぐ。

アゼル
そろそろかな。

俺は玄関に行く。
倉庫から自転車を引っ張り出すために
早めに外に出る。

だが、既にミストは俺の家の前に来ていた。

ミスト
やっほー!
アゼルちゃん!

アゼル
おお、もう来ていたのか。
インターホン押せばよかったのに。

ミスト
だって、お父さんとかお母さんが居たら
いろいろまずくない?

アゼル
まぁそうだけどな…。
携帯があるんだから、使えよな?

ミスト
うん、次からそうするね!

次なんてあるのか…?
よくわからないけど、
また出かける事になりそうだ。

アゼル
とにかく行こうか。
何処に行く?

ミスト
うーん、近くのファミレスでいいんじゃない?

アゼル
そうだな、駅の近くまで行ってみるか。


俺とミストは駅の方へ自転車を走らす。
駅の方は割と近い方なのだ。
自転車で5分程度の場所にある。

ミスト
そろそろ着くね。

アゼル
あぁ。
よし、あそこのファミレスに入ろう。

ミスト
わかったー!

自転車置き場に自転車を止めてから、
そのまま店内へ入る。
すると、厨房の方から
営業スマイルのウェイトレスが出てきた。

ウェイトレス
いらっしゃいませー!2名様ですね!
こちらのテラスへご案内します!

アゼル
テラスか…。

ミスト
どうしたの?

俺は窓枠に貼ってある貼り紙を見た。
そこにはとんでもない事が書いてあった。
俺は絶句してしまった…。

アゼル
……。

ミスト
え、えっと…。
カップル専用席…?
カップルの方はパフェが半額になります…?
って、アゼルちゃん!?

アゼル
ん、んー…

俺は気を失うように机に突っ付してしまった。

あぁ。何か聞こえる…ぜ。

ミスト
もう!アゼルちゃん!
パフェを食べようよ!

アゼル
んー…しょーがねぇな…。

本当は昼食をとりにきたのにな…。
まぁいいか、ミストが楽しそうだし。

ミスト
じゃあこのチョコバナナパフェで!

アゼル
あぁ。
俺もそれでいいぞ。
って…ん?

俺はメニューに載ってある写真を見た。
そこには…
「1つのスプーンで仲良く一緒に食べよう!」
と、書いてあった。

ミスト
じゃあ、1つだけ頼むね!
すみませーん!

アゼル
あぁ…やはりこうなるのか…。
まぁ、半額で食べられるし…いいのか。

ウェイトレス
お待たせしました!
ご注文をお伺い致します!

ミスト
えっと、このカップル専用、
チョコバナナパフェで!

ウェイトレス
かしこまりました!
それでは、失礼致します!

ウェイトレスさんは意味深な顔をしていき、
大声で厨房に
「カップル専用、チョコバナナ1つ!」と
叫んで行った。

アゼル
うぅ…頭が…。

ミスト
どうしたの?
アゼルちゃん?

アゼル
いや、大丈夫だ…!
とりあえず普通に食べればいいよな?

ミスト
だめだよー、
カップルみたいにあーんってしないとさー!

アゼル
やっぱり、そうなるのか…。

ミスト
アゼルちゃんは…嫌…?

ミストは上目遣いでこちらを見てくる。
これは反則だろう。
俺は負けたのではないぞ…!

アゼル
別に嫌じゃないからな?
ほら、もうすぐ来るから…。

すると、ウェイトレスが笑顔で
頼んでいたチョコバナナパフェを持ってくる。

ウェイトレス
お待たせしました!
カップル専用、
チョコバナナパフェでございます!
ごゆっくりー!

ミスト
わぁー!
美味しそう!
ねぇ、アゼルちゃん!
こんなにもクリーム乗ってるよ!

アゼル
そうだな。
ところでさ、ミストは楽しいか?
俺なんかとこんなカップルの真似何かしてさ。

ミスト
んー?アゼルちゃんだからできるんだよ?
アゼルちゃんじゃないと、ここまでしないもん。

いきなりドキッ。と俺の心臓は高鳴る。
さっきまではこんなの無かったのに。
この気持ちはなんだろう…?
何故かミストの顔を直視できない。

アゼル
そ、そうか…
でも、何故俺なんだ…?

ミスト
だってね。
私を助けにきてくれたもん。
前の理事長の件でね?

アゼル
あぁ…あの時は…
ミストが大切で…。

そこまで言いかけて、俺は言葉を止めた。

ミスト
え、何?
大切だから…?

アゼル
ミスト…。
後で公園行かねぇか…?

パフェを普通に食べているミストに言う。

ミスト
うん。いいよ?
私も公園…行きたかったから。

アゼル
あ、あぁ…。

ここで確信したんだ。
俺はミストが好き。
いつの間にか恋をしてしまっていたんだ。
ミストの笑顔が眩しくて。
いつも俺の心配をしてくれて。

俺が転校生なのを気にせず、
友達として絡んでくれたこと。
きちんと告白しよう。

ミスト
アゼルちゃん?

アゼル
あ、あぁ、わりいな!
よし、じゃあせっかくだし、
してもらおうかな…?

ミスト
え!?
う、うん…。
はい、あーん…。

アゼル
あーん…。

口の中に広がるチョコの甘さ。
これが恋と一緒の甘さなのだった。

ミスト
アゼルちゃん…次、お願い!

アゼル
よし、ミスト。
あーん…。

ミスト
あーん…。
ん、おいひい…!

ミストは綺麗な笑顔で俺に笑いかけてくれた。
俺はこの笑顔をずっと守りたいと思った。

………………

ようやくパフェを食べ終わり、
会計を済ませて、外に出る。
もちろん、俺が何も言わずに支払いした。

ミスト
アゼルちゃん…ありがとね?

アゼル
あぁ、いいよ、
これぐらい払わないとな?

ミスト
ふふ。
アゼルちゃんは優しいなー…。

アゼル
そんな事ねぇーって。

ミスト
だから女の子が集まってくるのかな…。

アゼル
え?今何て言った?

ミスト
なんでもない!
行こう?公園に!

アゼル
お、おう。

俺はミストの最後の言葉が気になった。

自転車を漕ぎ、
公園の入口までやってきた。
もう時間が夕方だった。
時間が時間なので、子供達はいない。
静かな夕日にさらされる公園となっていた。

ミスト
夕日が凄いね…。
まるで世界が違うように見えちゃう。

俺はミストが歩いて行ったところを見計らって、
近くの桜の木に風の力を起こす。
すると、桜の花びらはミストの上を飛んでいった。

ミスト
わぁ…!
アゼルちゃん!
綺麗だね…!

アゼル
そうだな…。
ミスト…話がある。

ミスト
う、うん…。

ついにこの時が来た。
俺はミストの事が好きだったんだ。
出会った頃から。ずっと。
気にかけていた。

アゼル
ミスト…。
俺、ずっと自分の気持ちに気づけないまま
ミストの隣に居た。
だけど、今日のデートで気がついたんだ。
自分に恋愛など興味ないって言い聞かせていた。
だけど、違った。
ミストと出会えて、その笑顔を見る度、
鼓動が早くなっている自分がいた。
俺はミストが好きだ!
付き合ってくれ!

あぁ。人生初めての告白。
言葉がめちゃくちゃで恥ずかしい。
ミストは…どう思ってるのかな?

その返事を待っている時間は
妙に長かった。10分も待っている気分だ。
現実は30秒しか経ってないのに。

そして、ミストが口を開く。


ミスト
アゼル…ちゃん…!
嬉しい…!
わ、私も!好き!
大好き!

アゼル
ほ、本当か!?
嘘じゃ…ないよな…!?

ミスト
嘘でこんな事言えないよぉ!
ぐすっ…ひっく…。

アゼル
え!?
ちょ、泣くなよ…!

ミスト
わ、わかってる…うぅ…
でも…止まらなくて…。

アゼル
しょーがねぇな…。

俺はミストの小さな体を抱き寄せる。
すると、ミストは顔をうずめて泣いていた。

悲しさじゃない涙。
嬉しい涙。
その理由とは…。

そう。俺たちは今日から恋人同士になったから。

そして、ミストをお姫様だっこをする。

ミスト
え…!?アゼル…ちゃん…?

アゼル
まぁ、見てろって。

俺は風の魔法で一気に空に上がる。
そして、火の魔法で火力をあげ、
一気に上空にあがる。

ミスト
あ、ぁー!
アゼルちゃん…!
私達、空飛んでるの…?

アゼル
やったのは初めてだからな。
ちょっと、危ねぇかもしんねぇけど…。
このまま自転車も一緒に家に帰ろうか!

ミスト
うん!
アゼル…なら大丈夫!

アゼル
ミスト…。
ちゃんが抜けているぞ…?

ミスト
恋人になったのに、ちゃん付けはだめでしょ?
だから…アゼル♪
空を自由に翔けて行こうよ!

アゼル
あぁ、そうだな!
しっかり掴まってろよー!

ミスト
うん!

俺は火を一気に出し、加速する。
もちろん風の力と一緒に。

精霊魔法はやはりこういう事に使うべきだ。
戦闘なんかに使っちゃダメなんだ。

俺は頭の中で確信したのだった。