精霊魔法と学園LOVE.STORY Ⅳ

〜王都への道〜

第七話 伝説の属性精霊魔法

第七話 〜伝説の属性精霊魔法〜

そして放課後…。
俺は相変わらず帰宅部なので、
そのまま帰る準備をする。

アゼル
あー。
授業疲れるぜ…まったく。

そして、椅子から立ち上がり、
扉の方向へ向かう。

アザク
おい、待てよ…

やはり話しかけてきたか…
面倒な事にならないといいんだがな…。

アゼル
なんだよ?

アザク
お前、精霊魔法使えるだろ。
何か力が見えるんだ。

アゼル
あぁ、確かにそうだな。
だが、アザクには関係ないだろ?

俺はアザクってやつとは
あまり仲良くなれそうになかった。

アザク
まぁな。
でもな、話ぐらい聞け。

アゼル
あ、あぁ。

アザクの顔が険しくなり、
すごく目が鋭くなる。

アザク
今から、ウール街にきてくれ。
そこに俺の仲間がいるんだ。

アゼル
は…?何故俺がいかないとだめなんだよ?
用があるならそっちからきてくれよ。

アザク
お前は…。まぁいいだろう。
来てもらうことにしよう。

この男の考えている事がよくわからない。
すると、いつの間にか横に綺麗な女性がいた。

アゼル
む…。
いきなりなんだ?

アザク
この女はかつての精霊使いだ。
お前より、能力は上だ。

レイ
よろしく…。

アゼル
よ、よろしく。

俺より能力が上とは一体なんだろう?
精霊を使って他に何かできるのか?

レイ
わからないって感じね。
これから私が説明するわ。
アザクは帰って。

アザク
あいよ。
んじゃ、またな。

アザクがいなくなったので、
この女性と俺の2人きりだ。

夕焼けの赤い光が窓から差し込んでくる。
その窓際で女性は口を開いた。

レイ
私はね。名前はレイっていうの。

アゼル
レイさん…。

レイ
そう。
簡単に説明するけど、貴方の精霊魔法。
全てを解放しきれてないの。

アゼル
というと…?

レイ
見ててね。
…風の精霊よ。私を自由に!

すると、レイさんは空中に浮かび始めた。
教室の床から足が浮かんでいる。

アゼル
な…!
そんな…人は重力に逆らって飛べないだろ!?

レイ
それを可能にするのが、
属性精霊魔法なのよ。
いいこと教えてあげるね。

アゼル
は、はぁ…。

レイ
炎の精霊は、
焚火に使ったり、料理に使ったり。
水の精霊は、
飲み水にしたり、作物に水をあげたり。
雷の精霊は、
充電したり、家電を動かしたり。
風の精霊は、
空を飛んだり、移動手段にできるわ。

アゼル
おぉ…つまり、
日常生活にすごく便利だ…!
でも、属性のついた精霊なんて見えないのだが?

レイ
見えないのが、貴方の力不足なのよ。
普通の精霊魔法を限界に使ったことある?

アゼル
そういえばないな…。
それに何か関係が…?

レイ
ふふ。
やってからのお楽しみよ。
それじゃあ私は帰るね。

アゼル
あ…ちょ…!

レイって人は窓から飛び降り、
そのまま姿を消した。

アゼル
なんなんだ…。
今日家に帰ったら試してみよう。

俺はそのまま校門へと向かった。

……………。

ロッカーで靴を履き替えた後、
校門の方に目をやると、
いつもの2人が待っていた。

レイナ
やっほー、アゼルちゃーん!

ミスト
アゼルちゃん、一緒に帰ろ!

アゼル
あぁ、2人共…待っててくれたのか。

ミスト
今日は少し遅かったね?
何してたの?

アゼル
ん、まぁ…絡まれててな。

レイナ
ま、まさか…!
こ、こ…告白とか!?

アゼル
いや、ないから。

ミスト
本当にどうしたの?

レイナとミストは心配してくれている。
やはり、ここは話した方がいいよな。

アゼル
アザクってやつ、いるだろ?
ほら、今日転校してきた。

レイナ
あ、うん。
あの人がどうかしたの?

俺は二人に属性精霊魔法がある話をした。
そしたら何故か、
二人はすごく笑顔になっていった。

ミスト
ねぇ、1回やってみようよ!

レイナ
私達がついてるからさ!

アゼル
あ、あぁ…
俺の自宅の庭でやろうと思う。
きてくれるか?

ミスト
もちろんだよ!

レイナ
倒れたらまた私のお家に運んであげるね!

ミスト
ふぇ!?
レイナ、アゼルちゃんをお家にいれたの!?
あ、あんなこととかしたのかな…

レイナ
実はね…そうなの…。
ごめんね、ミスト…。

ミスト
う、うぁぁー!
もうアゼルちゃんのばかぁぁ!

アゼル
いや、あのさ。
俺、何も言ってないんだけど?
そして何もしてないからな!?

ミストは凄いスピードで走って行った。

レイナ
あっはっはー、ミストも純粋だねー!

アゼル
最悪だな、おい!?

今日の帰りもちゃんとカオスだった。

俺とレイナはミストを追いかけていると、
いつの間にか俺の自宅へと着いていた。

ミストを探して、辺りを見渡していると、
玄関の扉の前にしゃがんでいる人がいた。

アゼル
えーと、ミストさん?

ミスト
うぅ…アゼルちゃん、あれ本当なの…?

ミストは上目使いでこちらを見てくる。
これはちょっと…可愛い……じゃなくて!
きちんと説明してあげないと。

アゼル
あぁ、ミストが連れて行かれたときあったろ?
そのときにレイナが俺を拾ってくれたんだ。
傷の手当をして、一晩寝かせてもらった。
もちろん普通にな。

ミスト
そうだったんだ…
私に飽きてレイナの方に行ったと思った…。

すごく小さい声でミストがぶつぶつ言っているが、
こちらには全く聞こえなかった。

アゼル
なんか言ったか?

ミスト
うぅん!なんでもないよ!
さ、ほら!早く精霊魔法を限界まで使お!

俺は全力で精霊魔法を使い続ける。
すると、見たことがない赤い精霊がいた。

精霊レッド
汝は…私の力を必要とするか…。

赤い精霊はいきなり喋りだした。

アゼル
まだ…よくわからないんだ。
お前の力は一体どんな時に使うんだ?

精霊レッド
私は炎の力を持つ。
日常生活で炎を使うものがあると思う。
そこで力になれるだろう…。

アゼル
そのエネルギーは無限に生み出されるのか?

精霊レッド
それはない。
汝の体力を消費するだろう。

つまりだ。
炎の精霊魔法を使うには、
代償として何かを支払わなければいけない。
それが自身の体力を使うということだ。

だいたいの目安で考えると、
俺の体力が100とする。
料理を10分行う事で、10消費するとしよう。
残りは90。
これがなくなると、使えなくなるって事だ。

精霊レッド
汝は私が初めてのようですね。
他にも水、雷、風がいます。
それらの力も取り込んでください。
私は汝に力を貸します。

アゼル
ありがとう…。
なんかよくわかんねぇけど…
使えるようにはなりたいな。

精霊レッド
それでは…。

話が終わると、
精霊レッドは俺の体に入り込む。
だが、特に変わった様子がない。

ミスト
アゼルちゃん?
どう…?

アゼル
あ、あぁ…一応、炎の力は手に入ったようだ。

レイナ
うーん、見た目は変わってないけど…?

ミスト
一回使ってみたらどうかな?

アゼル
そうだな…雑草でも燃やしてみるか!
えーと、確か…。

右腕に透明の炎と書いた赤いスイッチがある。
これに触れてから手を前にかざし、
雑草に向けて気をいれる。
すると、雑草が一気に燃え上がった。

ミスト
わぁ…!
すごいね、これ…

アゼル
あぁ…自分でもびっくりしたぜ…

レイナ
ちゃんと力を調節しないと、
料理するときとか食べ物を炭にする可能性あるよ?

アゼル
そうだな…。
気を付けないと。

確かにそうだ。
力を調節しないと家ごと爆発する可能性がある。
炎は攻撃性が高い。
いざとなれば街1つ焼く事も可能だろう。

アゼル
これからは、
かなり抑えてしないといけないな。

ミスト
そうだね、
アゼルちゃんに燃やされて死ぬとか嫌だよ…

レイナ
あぶり焼きにして…食べるって事をするかも…

アゼル
し、ま、せ、ん!!
はぁ…今日は疲れたから帰ろう。

ミスト
じゃあまた明日ね?

アゼル
あぁ、気をつけてな!

レイナ
私はこっちだから!
またねー!

それぞれ2人は別の道に歩いて行った。

アゼル
何か疲れた…
今日はすぐに寝よう…。

俺は家に入り、自室に行く。
制服を脱ぎ捨て、そのままベッドに飛び乗る。

アゼル
何だか…面倒な事になってきたよな…。
ぐぅ…。

俺はいつの間にか深い眠りに入ったのであった。

第八話 サツキの思い

第八話 〜サツキの思い〜


サツキ
ねぇ、お兄ちゃん。

レオン
ん?どうした?

サツキ
思うんだけど、
アゼル先輩が使う精霊魔法を、
国家の為に役に立たないかな?

レオン
いい考えかもしれないけど、
アゼルと会えなくなってしまうぞ?

サツキ
え、どうして?

レオン
そりゃ、
いろんな所に行ってしまうから、
ほとんど戻ってこれなくなると思うぜ。

サツキ
なるほどね…。
うーん…。

レオン
ほら、もう寝なよ?
俺も寝るからさ。

サツキ
うん。
おやすみ、お兄ちゃん。

レオン
あぁ、おやすみ。

私はお兄ちゃんの部屋を後にし、
自室へ戻る。

サツキ
アゼル先輩に相談してみようかな。

アゼル先輩に話したら、
いい考えが出るかも。

前の理事長じゃないけど、
それでアゼル先輩に収入が入るかも。

サツキ
明日になったら聞いてみよっと!

私は眠りについたのだった。

……………


アゼル
んんー…
もうこんな時間か…

時計を見ると8の時を短針が指していた。

アゼル
あぁー!
やばい!ミストを起こさないと!

俺は慌てて電話をかける。
今から起きて用意するとなると、
ミストの家は学園からすると、
俺の家よりも遠い。
なので、
2倍の速度で支度を済ませなければならない。

ミスト
ふぇ…もしもし…?

アゼル
ミスト!
早く起きろ!
俺が寝坊してしまった!

ミスト
え…!?
ほんとに!?
早くしないと!

アゼル
前みたいに自転車かっ飛ばしてくるんだ!
ただし、事故るなよ!

ミスト
うん!
じゃあ待っててね!

アゼル
あぁ!

そして、俺はスマホの通話終了ボタンを押す。
実際に俺はというと、
そこそこの早さで準備をすれば余裕に間に合う。
ミストは女の子だから、
いろいろ時間がかかるだろう。

アゼル
悪いことしてしまったな…。

俺は少し急ぎ気味で支度を済ませるのだった。

…………


レオン
さて、俺たちは今から行くか!

サツキ
うん!
お兄ちゃん、今日は何に乗るの?

レオン
今日はバイクだな。
少し余裕に行きたいからな!

サツキ
やった!
バイクって風が気持ちいいんだよね!

レオン
そうだな!


俺の家、レオン家は学園から結構離れている。
学園内で一番遠いって言われているぐらいだ。
なので、俺は免許を取り、
サツキを後ろに乗せて学園に向かう事が
登校手段となっている。

もちろん、学園から許可は出ている。

何故そこまでして青洋学園に通うのかと言うと、
サツキが自然環境科の方に行きたいと
高校に入る前の俺に言ってきたのだ。
その時にいろいろ調べて、
親から候補が出たのが青洋学園なのだ。

そこは学力がそこそこにいる場所だった。
俺は必死に勉強して、何とか合格した。
妹を引っ張る力ができたのだ。

俺が心の中で語っていると、
サツキから声をかけられる。

サツキ
お兄ちゃん?
どうしたの?

レオン
いや、昔の事を思い出してさ。

サツキ
なーに?昔のことって。

レオン
俺が高校に入る前だよ。
必死に勉強して、何とか合格したなーって。

サツキ
あぁ…、あの時のお兄ちゃん。
必死だったもんね…。
自然のことなんてまったくだったもんね?

レオン
まったくだぜ。
俺はエンジニアの方に行きたいって
勉強してたからな。
正反対だったぜ。

サツキ
なんかごめんね?

レオン
いいんだ、
それより早く乗るんだ。

サツキ
うん!

俺はサツキを後ろに乗ったのを確認すると、
メットを被らせる。
そして俺もしっかり被り、走り出す。

レオン
しっかり捕まってろよ!

サツキ
わかったー!

俺は車の無い道をひたすら走らせるのだった。


…………


アゼル
いやー、ほんとごめんなー。
まさかあれだけぐっすり眠るとはな。

ミスト
もう!
ほんとにやばかったんだからぁー。

アゼル
ごめんな、食堂でなんか奢るよー。

ミスト
ほんとに!?
でも、私も悪いんだよね…。
しっかり1人で起きないから悪いんだよね。

アゼル
あぁ、それは仕方ないよ。
ミストは低血圧みたいだしな。
それに最初に約束してしまったからな。

ミスト
うん、ありがとね。

アゼル
いいよ、まぁとにかく何か奢るよ。

ミスト
うん!じゃあ早く行こう!

アゼル
そんな慌てると転けるぞー!

ミスト
大丈夫…!わわっ!

アゼル
危ない!

俺はミストの手を握り、
自分の方へ引き寄せた。

ミスト
うぅ…アゼルちゃん…。

アゼル
あ…!ごめん!
なんか抱きしめる感じになってしまったな…。

ミスト
い、いいよ…少しびっくりしちゃっただけ…。

アゼル
と、とりあえず…行こうか。

ミスト
うん…。
それと…別に…嫌じゃなかったよ…。

アゼル
ん?何か言ったか?

ミストはすごく小さな声で何かを喋っていた。
俺には聞こえない程の声で。

ミストと話しながら歩いていると、
いつの間にか校門前に着く。
するとそこには生徒会長がいつものように
服装のチェックをしていた。

アイ
あら、アゼルくん。ミストさん。
おはよう。

アゼル・ミスト
おはようございます、先輩。あ…。

見事にハモってしまった。
息の良い俺たちに先輩は微笑む。

アイ
息ぴったりね!
何かいい感じね、二人とも。

アゼル
あはは…そうですね。

ミスト
い、いい感じって何ですか…!?

アイ
そうね…相性が良いとかかな?

ミスト
あ、あ…そういうことですか!

アイ
ふふ。
でも、アゼルくんの事好きなんでしょ?
早くしないととられちゃうよ?

アイ先輩は俺だけに聞こえないように
ミストに耳打ちをしている。
すると、ミストが赤面して走っていってしまった。

アゼル
いや、何やってんすか、先輩。

アイ
ただのアドバイスよ。
さぁ、服装は大丈夫だから行きなさい。

アゼル
あ、はい…ではまた後ほど…。

アイ先輩はいったい何をアドバイスしたのだろう?
考えたが、全然わからなかった。

アゼル
まぁ考えてても仕方ないか。


俺は自分の教室に向かうのであった。

第九話 購買部

第九話 〜購買部〜


俺は教室に着いたので辺りを見渡す。
まだ教室は静かだった。

その中にいる見知った顔に挨拶する。

アゼル
おはよう。レオン。

レオン
おー、おはよう。

アゼル
今日はバイクか?

レオン
まぁな。
それより、ミストが机に...。

アゼル
あぁ...。

ミストは机に顔をつけて、
腕で隠すようにしている。
これは声をかけた方がいいのだろうか?
まぁ別に俺はやましいことなんてないからな。
話しかけてみることにする。

アゼル
よう、さっきはどうしたんだ?

ミスト
べ、べつに...なんでもないよ?

アゼル
そうか...じゃあ何で顔を合わせようとしないんだ?

ミスト
え...いや...今はだめなの!

アゼル
何がだよ!?

ミストはそのままの状態で話している。
今はだめってどういうことなんだ...?
女心はよくわからない。

レオン
まぁ、いいんじゃねぇの?
そのままにしておいたら復活するだろ。

アゼル
あぁ...そうするか。

俺はミストの横の席に着席して、
この前の授業の復習をする。
すると、
いきなり後ろの扉からレイナが飛んでくる。

レイナ
おっはよー!アゼルちゃん!

ミスト
あ...!

アゼル
わ、ばか!やめろ!

レイナは勢いをつけて俺に突っ込んでくる。
これは避けれない...。

レイナ
ぎゅううー!
ね、ね、お昼一緒に食べよー?

アゼル
や、やめろ、いろいろやばいからやめろ!

ミスト
...!

レイナ
ねえ、お昼はー?

アゼル
答えるから!
この腕を離せ!

どういう状況なのかというと、
レイナが俺の方へ突っ込んできて、
そのまま俺の首に腕を回してきた。

そして、なにより...
顔か横にあるため、近すぎて...
それにいい匂いが...
って...いやいやいや!

レイナ
何でそんな赤くなってるのー?
私に照れたのかなー?

アゼル
そんなわけないだろ!
気のせいだ!
とにかく飯は一緒に食うから離れろよ...。

ミスト
...。

俺は視線を感じて、
そのまま横に目をやる。

アゼル
...。ど、どうした...?

ミスト
アゼルちゃんの鈍感!
ふん!

アゼル
なにがだよ!?

レイナ
ミスト、もしかして...嫉妬してるのー?

ミスト
べ、別に!

アゼル
な、なんだ?

レイナ
やっぱり私はいいや、
ミストとアゼルちゃんで食べてね!

ミスト
あ...レイナ...!

アゼル
いいのか?

レイナ
いいよ!
私は別の友達と食べるから!

アゼル
なんか悪いな。
ミスト、
というわけで昼飯ご一緒させてもらうぜ?

ミスト
あ...うん...。

何故かわからないが、
レイナがミストに気を使ってくれたようだ。
しかし...一体なんのために...?

ミスト
ねぇ、アゼルちゃん。

うーん。よくわからないな。
まぁいいか、ミストと飯も悪くないな。
今日はレオンに謝っておこう。

ミスト
アゼルちゃん!

アゼル
わ!どうした!?

ミスト
さっきから呼んでいるのに
ずっと上の空だったでしょ?

アゼル
あぁ...悪い...考えごとしていた。

ミスト
そうなの?
ね、ね、今日のお昼は屋上で食べない?

アゼル
あぁ、いいけど...
購買部に寄らせてくれよ?

ミスト
うん、いいよ!

話し込んでいるうちに、
教室の中がクラスメイトでいっぱいになっていた。

黒板の上にある時計を見ると、
そろそろ授業が始まる時間だった。
結局復習できないまま、授業を受けるのだった。

.........。

授業はそれなりに理解できたので、
良しとしておく。

そして昼休みになり...。
俺の腹は空腹状態になっている。

アゼル
あぁ...腹減った...。

ミスト
お疲れ様。じゃあ購買部に行こう?

アゼル
そうだな、
ちょっと待ってな。
レオン!

レオン
なんだよ、そんなでかい声出さなくても
聞こえてるよ。

アゼル
なんだ、すぐ近くにいたのか。

レオン
それで、飯はどうするんだ?

アゼル
その話だが、悪いな。
ミストと食べる事になってな。

レオン
お、わかった。
じゃあまた後でな!

アゼル
すまないな。
んじゃあ、また後で。

俺はレオンと話終わると、
ミストの近くに行く。

ミスト
もういいの?

アゼル
あぁ、行こうか。

ミスト
うん!

俺とミストは購買部に向かう。
購買部は一階にある。
そこまで他愛のない話をしながら歩く。

ミスト
部活かぁ...。

アゼル
部活とか全然考えてなかったな。
ミストは何か入らないのか?

ミスト
入りたいんだけど、
私の好きな料理研究部がないんだよね...。

アゼル
じゃあ作ればいいじゃないか。

ミスト
人が集まってくれるかわかんないもん。
アゼルちゃんが手伝ってくれるっていうなら...

アゼル
あのなぁ...。
そういうのは自分で声をかけて作るもんだぜ?

ミスト
そうだよね。
どうしよっかな。

やはりミストだけじゃ、
駄目かもしれない。
レオンや、サツキちゃん。
アイ先輩、レイナにも声をかけてみよう。

アゼル
んー、俺も手伝うよ。
というわけで、
放課後に、皆に話してみようか?
きっと力になってくれると思うよ。

ミスト
本当に!?
うん、そうしてみる!

部活をするっていうのも悪くないな。
そういう場所を作ろうとしている
ミストは皆で仲良くしたいんだと思う。

アゼル
理研究部か...。
俺あんまり料理しないからな...。

ミスト
じゃあ、一緒に練習しよ?

アゼル
部活でするのか?
だったら俺も入らないとな。

ミスト
うん、入ってくれたら嬉しいなぁ...。
ってか、入らないと困る!

アゼル
あはは...わかったよ。
入るよ。
んじゃあ放課後に部員探しだな。

ミスト
ありがと!アゼルちゃん!

ミストがいきなり腕を絡めてくる。
かなり周りの視線が痛いんだが...。

アゼル
み、ミスト?

ミスト
あ...ご、ごめんね!

周りの視線に気がついたのか、
ミストが離れる。

アゼル
あ、あぁ...
それより、早く行こうぜ。

ミスト
うん!昼休み終わっちゃうもんね。

俺たちは購買部に少し急ぎ足で向かう。

購買部に着いた俺とミストは
列に並ぶ。

アゼル
いやー。しかしまぁ...。
結構混んでいるな...。

ミスト
うん...すごく大変そうだね...。

???
いらっしゃいませ!どれにしますか?

購買部の部員が次々にさばいていく。
そして、俺たちの番になった。

???
いらっしゃいませ!どれにします......あら?

アゼル
ん...?どうかし...

???
あぁー!精霊魔法の人だ!

アゼル
え!?

すると一斉に視線がこちらに向く。

男子生徒A
あいつか!精霊魔法を使えるやつは!

男子生徒B
つーことはモテモテのクソ野郎じゃないか!

キタヤマくん
ふっ。こんなやつか...。
思ってたより弱そうだな…!

女子生徒A
ん、結構かっこいいね...。

女子生徒B
は、話しかけようにも隣にいる子が...ね?

いきなり叫ぶものだから、
一瞬で話がまわっていった。
何だか別の次元の声も聞こえた気がするが、
それは気のせいにしておこう。

???
それじゃあサービスするね!
どれにする?

アゼル
うーん。
じゃあこれとこれで。

俺は無難な焼きそばパンとコーヒーを買った。

???
あ。意外と少食なのね。

アゼル
まぁな。
ミスト、何か欲しいものはあるか?

ミスト
え...あ、うん!
それじゃあいちごミルクを...。

???
はーい、それじゃあ代金頂くね。

俺は財布から500円を取り出し、
購買部の人に渡す。

アゼル
ところで、名前は何ていうんだ?

トモカ
あたしはトモカだよ。
ちなみに2年だから、アゼルくんと一緒だよ。

アゼル
へぇ。あんまり見たことないから、
わからなかったよ。

トモカ
そうなんだ。
ところで、こっちの彼女さんは?

アゼル
か、彼女じゃないんだが、
友達のミストだ。
仲良くしてやってくれ。

ミスト
あ、あのぅ...。
トモカちゃん...よろしくね。

トモカ
友達なんだ...ふーん...。
ミスト、あたしはトモカでいいよ!

ミスト
うん、ありがとね、トモカ。

トモカ
うん!

アゼル
それじゃ、かんばってな。

トモカ
うん、またね!

新しく購買部のトモカって子が
友達になってくれて、ミストも嬉しそうだ。
まぁ、俺のおかげでもあるんだけどな...。
とりあえずよかったかな。

アゼル
それじゃあ屋上に行くか。
ここ一階だからしんどいと思うけど...。

ミスト
ここの校舎5階建てだもんね...。
しかもエレベーター使っちゃいけないなんて...。

アゼル
エレベーター開放すると、
利用するやつが多いから閉めているんだと思う。

ミスト
ま、若いから大丈夫だよね!

アゼル
まぁな。
それじゃあ行こうか。

俺たちはそのまま屋上へ向かったのであった。

第十話 風の精霊

第十話 〜風の精霊〜


俺とミストは他愛もない話しをしながら
屋上にやってきた。

ここは生徒に人気があり、
多くの人数が地面に座ってお弁当を広げていた。
その中で端の方が空いていたので、
俺たちはそこに腰をおろした。


ミスト
結構人多いね…。
やっぱり人気なんだねー。

アゼル
そうだな、壁際に花壇があって
花の香りもするしな。


そう。屋上に壁際に花が埋めてある。
どれも綺麗な花ばかりで、
何処かの誰かが世話をしていると思われる。
ガーデニングクラブがあるというのは
聞いたことがあるが、実際見たことがない。
もしかするとガーデニングクラブの人達の
花壇なのかもしれない。

ミスト
ねぇ、アゼルちゃん。
このお花、誰が育ててるのかな?

アゼル
わからないけど、
ガーデニングクラブの人達じゃないかな?

ミスト
へぇ…!
素敵な部活なんだね!

アゼル
あぁ。こんなに綺麗に咲かせるのは
難しいからな。

ミスト
精霊魔法ではできないの?

アゼル
どうだろう…。
できるかもしれないけど、
やっぱりその人の愛情がないと
花は綺麗に育たないと思うぜ?

ミスト
そっか…愛情がいるんだね!

アゼル
あぁ。俺みたいな男がやっても
こんなに綺麗に咲かないしな。
ミストみたいな可愛い子がやったら
咲いてくれるかもな!

ミスト
ふぇ!?
か、か、可愛い!?

アゼル
ん?何か変な事言ったか?

ミスト
な、なんでもない!

ミストは顔を赤らめながら
いちごミルクを飲む。
それに合わせて俺もコーヒー牛乳を飲む。
すると背後に何か違和感があった。
俺は咄嗟に後ろを振り返った。

アゼル
な…あれは…!

隣校舎の屋上の端側で女子生徒が
崖にぶら下がっている。
今にも落ちそうになっている。
周りに人はいても、
助けようにもフェンスがあり、
乗れるか乗れないかの足場だった。

アゼル
悪い!ミスト!
ちょっと行ってくる!

ミスト
あ…アゼルちゃん!
私もいく!

俺は猛ダッシュで一階まで駆け下りる。

そして渡り廊下を走り抜け、
全力で階段を駆け上がる。

アゼル
間に合ってくれ…!

そして屋上へついた。
人混みで様子が見えない。
俺は人混みを蹴散らし、一番前に出る。

男子生徒
なんだよ!押すなよ!

アゼル
邪魔なんだ、どけ!

男子生徒
なんだと!?
お前こそどけよ!

アゼル
…こんな事で使いたくなかったが…。

俺は男子生徒を脅すために炎のスイッチを入れる。
そして手のひらに炎を出す。

男子生徒
ひっ…
す、すまん!
だ、だがどうやって助けるんだよ!

アゼル
いいから見ておけよ…。

俺はフェンスを乗り越え、
足場の狭い所に何とか降りる。

女子生徒
うぅ…私…私!
死にたくないよ!
助けて!

アゼル
わ、わかったから騒いで余計な体力使うな!

女子生徒
もう…手が限界…

すると女子生徒は一瞬にして
手が外れて急降下していった。

アゼル
くそっ!
いちかバチかだ…!

俺は校舎から飛び降りた。
女子生徒を助けるために。

女子生徒
いやぁぁぁ!

アゼル
落ち着け!
今助けてやるから俺にしがみつけ!

すると女子生徒は俺に抱きついてきて、
藁にも縋る勢いだ。
落ちている間に頭脳をフル回転させる。
だが…どうにも思いつかない。

すると緑の何かが俺の中に
入って行くのが見えた。

風の精霊
私の力を使いなさい。
さすれば貴方達は救われるでしょう。

アゼル
な…!精霊か…!
よし!使わせてもらおう!

俺は腕に増えている風のスイッチを押す。
そして下方向に風を作り出す。
すると、急降下していた俺と女子生徒は
さっきまでの勢いが嘘みたいに止まっていた。

アゼル
くっ…浮いているのか…?

女子生徒
わわっ!
す、すごい…あなたって一体…。

アゼル
俺は精霊魔法士、アゼルだ!
危なかったな…。
助けれてよかったぜ…。

女子生徒
うぅ…アゼルさんは命の恩人です!

そう言いながら女の子はさらに抱きついてくる。

アゼル
あ、ちょっと…そんなに抱きつかれると…

女子生徒
嫌です!
落ちちゃうじゃないですか!

アゼル
いやまぁそうなんだけど…。
よし、今から地上に向かって
力を落として行くから
しっかり掴まっておくんだぞ?

女子生徒
う、うん!

俺は力を弱めながら地上に向かう。
凄い風力が地面を舞いあげているため、
人が近づけない状態になっている。
そのせいか、
遠くの方で救急隊員が待機している。

アゼル
よし、もう地面に足が着くからな。

女子生徒
ほんとだ…
もう本当に…感謝しきれないほどの事を
していただきました…
何かお礼させてください!

アゼル
いや、いいんだよ、
無事だっただろ?
それが一番だから気にすることないって。

女子生徒
あ、あの…アゼルさん。
私はミオっていいます。
一年生です!
覚えておいてくださいね?

アゼル
あ、あぁ…
とりあえず救急隊員の人に
話をしてきたらどうだ?

ミオ
そうですね…
では行ってきます!

ミオっていう子は
そのまま救急隊員の人達の所に走っていった。
走れる程大丈夫だったんだな…。
そしてミストが追いかけてきてくれる。

ミスト
アゼルちゃん!
大丈夫!?
何処か怪我してない!?

アゼル
あぁ…大丈夫だが…。
それより、風の精霊を手に入れたんだ!

ミスト
え?もうそんなに早く?
何だか話が早いね!

アゼル
まぁどうせ作者の手抜きだろう?
仕方ないさ。

まじっく翔太
いや、ね?
早く話進めないと第二章終わらないんだよ。

何だか異世界から声が聞こえた気がするが
気のせいにしておこう…。

ミスト
ねぇねぇ、作者さん。
アゼルちゃんの精霊魔法を
少し詳しく説明してくれない?

アゼル
気のせいではなかったのか…。

まじっく翔太
ん、いいだろう。
アゼル専用技になるんだが…。
精霊魔法。これは計7種の精霊がいる。
ちなみにアゼルが持っているのは
炎と風だったよな?
右手に記された透明のスイッチに
赤が炎、緑が風と属性の色に合わせて
スイッチがある。
それが使える精霊魔法だ。
ノーマルの精霊魔法にするにはスイッチを
押してない時がノーマルだ。
ここまでいいか?

アゼル
あぁ。
何となくわかるぜ!

ミスト
えっと…。
精霊ってどんな所にいるの?
それと、反発し合う精霊同士もいるんだよね?

まじっく翔太
ミストさん、いい質問だね。
精霊の居場所は自然の多いところ。
綺麗な場所を好む。
この際教えておくけど、
水の精霊は学園近くの山奥の泉にいる。
そこはかなり綺麗な泉で、
飲んでも大丈夫な水だ。
で、反発し合う精霊は…
炎と氷、雷と水、光と闇。
この3つだな。
ちなみに風が入ってないのは
どの属性にも反発しないからだ。
炎があるところには氷の精霊は少ないし、
水があるところには雷の精霊が少ない。
光の中には闇はいない。
この反発を覚えておくんだな。

ミスト
なるほどね…。

アゼル
ちょっと長いけど、理解はできるな。
さすが作者だぜ。

まじっく翔太
そりゃ、作ってる本人だから詳しくないと
作者失格だろうよw
まぁ、とりあえずそういうわけだ。
じゃあ、物語ガンガン進めるからよろしく。

アゼル
さてと…。
えーと、どうする?
昼飯の途中で抜けてきたからな…

ミスト
先生に話して、事情を説明しよう?
もしかしたら
ご飯を食べる時間ぐらいくれるかも!

アゼル
だといいけどな。
よし、じゃあ話に行くか。

俺とミストが校舎に歩き出した途端、
救急隊員の人に話しかけられる。

救急隊員
君、この子を助けてくれたんだね?
私達プロでもどうする事もできなかったのに。
君は勇敢だな。

アゼル
いえ、そんな…
俺はただ助けるのに夢中で…。

救急隊員
ふむ…
見たところ無傷だし…あの高さから落ちて
二人とも無事なんて有り得ないからな…。

アゼル
あぁ…俺は精霊魔法を使えるので、
それを使い、ミオさんを助けました。

救急隊員
なんと。これはこれは…。
精霊魔法士さんでしたか!
噂に聞いてましたけど、
実際に見たのが初めてで…。

アゼル
いや、そんな偉い人じゃないんで
敬語とかやめてくださいよ…。

救急隊員
いやぁ!君の力は本物だ!
ぜひ救急特殊隊員に入らないかね!

アゼル
え、俺まだ学生で…

ミスト
アゼルちゃん!
給料はいくらぐらいか聞いてみようよ!

アゼル
あのな…俺、全然わかんねぇぞ?

仕方なく、ミストのために給料を聞いてみた。

アゼル
すみません、
給料っていくらぐらい出ますか?

救急隊員
そうだな…
特殊隊員だから俺たちよりも高いはず…。
月給50万超えはするだろうな…。

おおう…これは高い…。
だが…学園があるときはどうするんだろう?
緊急指令が出た時だけ行けばいいんだろうか?

アゼル
高いですね。
しかし、緊急指令が出たときに
学園で授業受けていたらどうするんですか?

救急隊員
それは先生にこちらから事情を説明します。
でも、ほとんどないと思うんで…
仕事をせずともいるだけで50万は稼げますよ?
どうです?

アゼル
うーん。
少し考えさせてもらっていいですか?

ミスト
え、なんで?
アゼルちゃんならできると思うんだけどなー。

アゼル
いろいろ事情ってもんがあるんだよ。

救急隊員
まぁいいよ!
そんなに急に考えなくても。
それじゃあ決まったら電話してくれないかな?

救急隊員は俺に名刺を渡してきた。
救急隊員隊長…って…この人隊長だったのか。
全然わからなかった…。

救急隊員
それじゃあ。お大事に。

アゼル
あ、はい…。

ミスト
アゼルちゃん?
それ、どうするの?

アゼル
とりあえず考えてみる。
これで将来決まるのは嫌だからな…。

ミスト
そうだね、
私達って一応自然科のほうだからね。

アゼル
あぁ。
そうだな。

そう。
俺たちは自然科の事を勉強している。
ちなみに俺は精霊魔法のおかげで
特待生みたいな感じで学園に入れたものだ。

ミスト
アゼルちゃん、そろそろ校舎に戻ろ?

アゼル
あぁ、そうだな…。
さっきの子は保健室に行ったみたいだしな。

ミスト
…気になるの?

アゼル
まさか。
そんな一目惚れとかしないぞ。

ミスト
ふーん…。

アゼル
なんだよ?

ミスト
別にー。
アゼルちゃんの鈍感さには呆れかえるよ…。

アゼル
俺が悪いのかよ!?

と、ツッコミを入れる前に、
ミストは校舎に向かって歩いて行った。

俺とミストは校舎に入り、時計を確認すると、
昼休み終了5分前だった。
さすがに5分じゃ食べきれないだろう。

アゼル
やはりここは担任を探して話をするべきだな。

先生を探す為、職員室を尋ねる。

アゼル&ミスト
失礼します。

担任
あ、二人とも!
怪我はなかった!?
今から放送で呼び出そうとしてたのよ。

ミスト
私はなんともないんですが…
アゼルちゃんが…。

担任
アゼルくんがどうかしたの?

ミスト
一緒に屋上から落ちたんです!

ミストはそう叫ぶと、
周りにいた先生達がこちらに振り向く。

何かいろいろ間違っている。
俺はきちんと話をすることにした

担任
こ、声が大きいわよ…
それで…大丈夫?
アゼルくん。

アゼル
あ、いえ、
落ちたのは落ちましたけど、
風の精霊のおかげで助かりました。

俺が説明すると、
周りの先生たちは持ち場に戻って行った。

担任
なるほど…さすがだわ。
そうなると空を自由に飛べるんじゃないかしら?

アゼル
いえいえ、さすがにそれはまだ…。

ミスト
アゼルちゃん!
練習しましょう!
私を空の旅に連れて行ってね?

アゼル
あのなぁ…。

担任
あ、そうそう。
昼休み、この事件で潰れてしまったでしょ?
体の事も心配だし、今日は早退してもいいわ。

アゼル
あ、いいんですか?
出席日数とかは…?

担任
それなら大丈夫よ。
特別休日にしといてあげるから。

ミスト
よかったー、
私、出席日数心配だったんです…。

アゼル
おいおい…。

担任
そういうわけだから、
今日は帰って大人しくしときなさい。

アゼル
はい。失礼しました。

ミスト
失礼しました!

職員室から出ると、
ミストはこんな提案をしてくる。

ミスト
ねぇ、今からご飯食べに行かない?

アゼル
さっき先生に大人しくしてろって
言われたばかりなのにな…。

ミスト
それは…大丈夫でしょ!

まぁいいのか。
体は何もないし、
別に何処か痛むわけじゃない。
一度家に帰って、
制服を着替えてからの方がいいだろう。

アゼル
いいけど、一旦家に帰って、
制服から私服に着替えて行こうな?

ミスト
そ、それって…、
デート!?

アゼル
違うよ!?
何を勘違いしてるんだよ!?

ミスト
そ、そっか…。

アゼル
ほら、行くぞ?

ミスト
本当…アゼルちゃんの鈍感。

消え入りそうな声でミストが何かを呟く。

アゼル
なんだよ?

ミスト
何もないよーだ!

アゼル
何で怒ってんだよ…。

いまいち女心がわからなくて困る…。
どうせならちゃんと言ってくれればいいのに。

俺とミストは一旦家に帰り、
そのまま俺は家に待機し、
ミストが来るのを待っていた。

第十一話 恋心

第十一話 〜恋心〜


俺は家でミストを待っている。
私服に着替え、そのままリビングで寛ぐ。

アゼル
そろそろかな。

俺は玄関に行く。
倉庫から自転車を引っ張り出すために
早めに外に出る。

だが、既にミストは俺の家の前に来ていた。

ミスト
やっほー!
アゼルちゃん!

アゼル
おお、もう来ていたのか。
インターホン押せばよかったのに。

ミスト
だって、お父さんとかお母さんが居たら
いろいろまずくない?

アゼル
まぁそうだけどな…。
携帯があるんだから、使えよな?

ミスト
うん、次からそうするね!

次なんてあるのか…?
よくわからないけど、
また出かける事になりそうだ。

アゼル
とにかく行こうか。
何処に行く?

ミスト
うーん、近くのファミレスでいいんじゃない?

アゼル
そうだな、駅の近くまで行ってみるか。


俺とミストは駅の方へ自転車を走らす。
駅の方は割と近い方なのだ。
自転車で5分程度の場所にある。

ミスト
そろそろ着くね。

アゼル
あぁ。
よし、あそこのファミレスに入ろう。

ミスト
わかったー!

自転車置き場に自転車を止めてから、
そのまま店内へ入る。
すると、厨房の方から
営業スマイルのウェイトレスが出てきた。

ウェイトレス
いらっしゃいませー!2名様ですね!
こちらのテラスへご案内します!

アゼル
テラスか…。

ミスト
どうしたの?

俺は窓枠に貼ってある貼り紙を見た。
そこにはとんでもない事が書いてあった。
俺は絶句してしまった…。

アゼル
……。

ミスト
え、えっと…。
カップル専用席…?
カップルの方はパフェが半額になります…?
って、アゼルちゃん!?

アゼル
ん、んー…

俺は気を失うように机に突っ付してしまった。

あぁ。何か聞こえる…ぜ。

ミスト
もう!アゼルちゃん!
パフェを食べようよ!

アゼル
んー…しょーがねぇな…。

本当は昼食をとりにきたのにな…。
まぁいいか、ミストが楽しそうだし。

ミスト
じゃあこのチョコバナナパフェで!

アゼル
あぁ。
俺もそれでいいぞ。
って…ん?

俺はメニューに載ってある写真を見た。
そこには…
「1つのスプーンで仲良く一緒に食べよう!」
と、書いてあった。

ミスト
じゃあ、1つだけ頼むね!
すみませーん!

アゼル
あぁ…やはりこうなるのか…。
まぁ、半額で食べられるし…いいのか。

ウェイトレス
お待たせしました!
ご注文をお伺い致します!

ミスト
えっと、このカップル専用、
チョコバナナパフェで!

ウェイトレス
かしこまりました!
それでは、失礼致します!

ウェイトレスさんは意味深な顔をしていき、
大声で厨房に
「カップル専用、チョコバナナ1つ!」と
叫んで行った。

アゼル
うぅ…頭が…。

ミスト
どうしたの?
アゼルちゃん?

アゼル
いや、大丈夫だ…!
とりあえず普通に食べればいいよな?

ミスト
だめだよー、
カップルみたいにあーんってしないとさー!

アゼル
やっぱり、そうなるのか…。

ミスト
アゼルちゃんは…嫌…?

ミストは上目遣いでこちらを見てくる。
これは反則だろう。
俺は負けたのではないぞ…!

アゼル
別に嫌じゃないからな?
ほら、もうすぐ来るから…。

すると、ウェイトレスが笑顔で
頼んでいたチョコバナナパフェを持ってくる。

ウェイトレス
お待たせしました!
カップル専用、
チョコバナナパフェでございます!
ごゆっくりー!

ミスト
わぁー!
美味しそう!
ねぇ、アゼルちゃん!
こんなにもクリーム乗ってるよ!

アゼル
そうだな。
ところでさ、ミストは楽しいか?
俺なんかとこんなカップルの真似何かしてさ。

ミスト
んー?アゼルちゃんだからできるんだよ?
アゼルちゃんじゃないと、ここまでしないもん。

いきなりドキッ。と俺の心臓は高鳴る。
さっきまではこんなの無かったのに。
この気持ちはなんだろう…?
何故かミストの顔を直視できない。

アゼル
そ、そうか…
でも、何故俺なんだ…?

ミスト
だってね。
私を助けにきてくれたもん。
前の理事長の件でね?

アゼル
あぁ…あの時は…
ミストが大切で…。

そこまで言いかけて、俺は言葉を止めた。

ミスト
え、何?
大切だから…?

アゼル
ミスト…。
後で公園行かねぇか…?

パフェを普通に食べているミストに言う。

ミスト
うん。いいよ?
私も公園…行きたかったから。

アゼル
あ、あぁ…。

ここで確信したんだ。
俺はミストが好き。
いつの間にか恋をしてしまっていたんだ。
ミストの笑顔が眩しくて。
いつも俺の心配をしてくれて。

俺が転校生なのを気にせず、
友達として絡んでくれたこと。
きちんと告白しよう。

ミスト
アゼルちゃん?

アゼル
あ、あぁ、わりいな!
よし、じゃあせっかくだし、
してもらおうかな…?

ミスト
え!?
う、うん…。
はい、あーん…。

アゼル
あーん…。

口の中に広がるチョコの甘さ。
これが恋と一緒の甘さなのだった。

ミスト
アゼルちゃん…次、お願い!

アゼル
よし、ミスト。
あーん…。

ミスト
あーん…。
ん、おいひい…!

ミストは綺麗な笑顔で俺に笑いかけてくれた。
俺はこの笑顔をずっと守りたいと思った。

………………

ようやくパフェを食べ終わり、
会計を済ませて、外に出る。
もちろん、俺が何も言わずに支払いした。

ミスト
アゼルちゃん…ありがとね?

アゼル
あぁ、いいよ、
これぐらい払わないとな?

ミスト
ふふ。
アゼルちゃんは優しいなー…。

アゼル
そんな事ねぇーって。

ミスト
だから女の子が集まってくるのかな…。

アゼル
え?今何て言った?

ミスト
なんでもない!
行こう?公園に!

アゼル
お、おう。

俺はミストの最後の言葉が気になった。

自転車を漕ぎ、
公園の入口までやってきた。
もう時間が夕方だった。
時間が時間なので、子供達はいない。
静かな夕日にさらされる公園となっていた。

ミスト
夕日が凄いね…。
まるで世界が違うように見えちゃう。

俺はミストが歩いて行ったところを見計らって、
近くの桜の木に風の力を起こす。
すると、桜の花びらはミストの上を飛んでいった。

ミスト
わぁ…!
アゼルちゃん!
綺麗だね…!

アゼル
そうだな…。
ミスト…話がある。

ミスト
う、うん…。

ついにこの時が来た。
俺はミストの事が好きだったんだ。
出会った頃から。ずっと。
気にかけていた。

アゼル
ミスト…。
俺、ずっと自分の気持ちに気づけないまま
ミストの隣に居た。
だけど、今日のデートで気がついたんだ。
自分に恋愛など興味ないって言い聞かせていた。
だけど、違った。
ミストと出会えて、その笑顔を見る度、
鼓動が早くなっている自分がいた。
俺はミストが好きだ!
付き合ってくれ!

あぁ。人生初めての告白。
言葉がめちゃくちゃで恥ずかしい。
ミストは…どう思ってるのかな?

その返事を待っている時間は
妙に長かった。10分も待っている気分だ。
現実は30秒しか経ってないのに。

そして、ミストが口を開く。


ミスト
アゼル…ちゃん…!
嬉しい…!
わ、私も!好き!
大好き!

アゼル
ほ、本当か!?
嘘じゃ…ないよな…!?

ミスト
嘘でこんな事言えないよぉ!
ぐすっ…ひっく…。

アゼル
え!?
ちょ、泣くなよ…!

ミスト
わ、わかってる…うぅ…
でも…止まらなくて…。

アゼル
しょーがねぇな…。

俺はミストの小さな体を抱き寄せる。
すると、ミストは顔をうずめて泣いていた。

悲しさじゃない涙。
嬉しい涙。
その理由とは…。

そう。俺たちは今日から恋人同士になったから。

そして、ミストをお姫様だっこをする。

ミスト
え…!?アゼル…ちゃん…?

アゼル
まぁ、見てろって。

俺は風の魔法で一気に空に上がる。
そして、火の魔法で火力をあげ、
一気に上空にあがる。

ミスト
あ、ぁー!
アゼルちゃん…!
私達、空飛んでるの…?

アゼル
やったのは初めてだからな。
ちょっと、危ねぇかもしんねぇけど…。
このまま自転車も一緒に家に帰ろうか!

ミスト
うん!
アゼル…なら大丈夫!

アゼル
ミスト…。
ちゃんが抜けているぞ…?

ミスト
恋人になったのに、ちゃん付けはだめでしょ?
だから…アゼル♪
空を自由に翔けて行こうよ!

アゼル
あぁ、そうだな!
しっかり掴まってろよー!

ミスト
うん!

俺は火を一気に出し、加速する。
もちろん風の力と一緒に。

精霊魔法はやはりこういう事に使うべきだ。
戦闘なんかに使っちゃダメなんだ。

俺は頭の中で確信したのだった。